Chiisaki koe no kanon: Sentaku suru hitobito. Directed by Kamanaka Hitomi. 2015. (Documentary, 119 min). BunBun Films.

200ドキュメンタリー映画『ヒバクシャ-世界の終わりに』(2003)、『六ケ所村ラプソディー』(2006)、『ミツバチの羽音と地球の回転』(2010)など、福島原発事故以前から原発問題を追っている鎌仲ひとみ監督による最新作。福島に残ることを選択した母親たちを中心に、子どもを被曝から守るための方法を探る人々の姿が描かれる。キーワードは「保養」である。日本各地のボランティアによって、「保養」、すなわち数週間の間放射線量の低い地域に子どもたちを連れていく活動が行われている。保養先では、放射能を気にせず外で遊ぶことができ、安全な食事を摂ることができる。これによって、子どもたちの体内の放射性物質を減少させることができる。1986年のチョルノーブィリ原発事故を経験したベラルーシでは、国家予算で子供たちを保養に出している。作中にはベラルーシの母親たちも登場し、同国での取り組みが紹介される。

しかし、保養支援や、自主除染など被災地に残った親たちによる、子どもを守るための取り組みは、結果的に子どもたちが放射能汚染の危険がある地域で生きていくことを後押ししてしまっているのではないか。根本的な矛盾や問題の解決には繋がらず、逆に子どもたちを被曝の危険にさらし続けてしまっているのではないか。本作品では、そう悩みながらも希望を捨てず行動する人々が描かれている。

Homepage: http://kamanaka.com/canon/english/

井沼睦(神戸大学)

映画: 小さき声のカノン-選択する人々 (2015)
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