reconstructing-kobe-cover2Edgington, David W. 2010. Reconstructing Kobe: The Geography of Crisis and Opportunity. University of British Columbia Press.

ブリティッシュコロンビア大学の地理学者であるDavid W. Edgingtonは、阪神淡路大震災後の神戸市復興計画の10年間について詳細に調査した。筆者は震災後1995年から2005年までの政治的、経済 的、社会的、また物質的な神戸の変化を、理論というよりは、当時の言説に関する報告、図表や写真などの大量のデータを使用し辿る。他地域の災害復興計画の 研究のための比較研究として、多様な範囲の学部生、院生のためのディスカッションや分析材料として、また、現在の東日本を形づくる復興の背景を理解するた めに、本書は有効である。

筆者は「crisis」と「opportunity」という二元の意味を持つ「危機」と「場所」を繋げ震災後の神戸を“geographies of crisis” と“geographies of opportunity”のパッチワークとして描く。本書は、震災前の状況、震災自体の特徴、政府とNGOの復興への取り組み、地域社会の取り組みと政府 との関係、という四つの枠組みで構成される。

とくに興味深いのは、様々なアクターの復興をめぐる対立が描かれているチャプター4,5,6である。多くの犠牲者が難民生活を強いられているのにも 関わらず、市が政府の補助金による神戸再開発計画を宣言したとき、とくに市民と市の対立は深まった。筆者は「まち」を都会化しようという「都市計画」が、 震災後の厳しい復興状況の中で、地域住民の「まちづくり」運動に介入する様子を描く。

地域住民による「まちづくり」組織と、市から派遣されたコンサルタントの専門家を通して、素人と専門家と官僚のコミュニケーションがどのように行わ れていたのか、また、彼らが復興にどう貢献し、どのように深刻な問題が設定され議論され、どのような社会が目指されていたのかについて、詳しい情報を本書 は提供する。

また、筆者はとくに日本社会の弱者、高齢者、ブルーカラー労働者、また在日韓国人、中国人、部落出身者などのマイノリティの震災後の経験について深く研究している。

Tyson Vaughan, Cornell University
英語本文の翻訳担当者: 井沼 睦 (神戸大学)

*参考の動画:Prof. Edgingtonが神戸と仙台を比較(http://www.asiapacificmemo.ca/japanese-geography-expert-david-edgington-video

本: Reconstructing Kobe: The Geography of Crisis and Opportunity (2010)
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